ARICA Qualityの雑記帳

人材育成支援、コールセンター業務支援を生業とする個人事業主の日々思うこと、感じることを気の向くままに記録しているblogです。

コールセンターと敬語

コールセンターの応対品質のチェック項目の一つに「敬語」があります。以前、応対品質診断のクライアントの担当者の方からこんな質問をよく受けました。

「敬語は何回間違えたら減点されますか?」

意外にこの手の質問は多く受けます。
コールセンターの品質管理担当者は、日々応対を聞き、基準に基づいて評価をし、数値化しなくてはなりません。応対者ごとにぶれてもいけません。だから「●回までOK!」という明確なモノサシが欲しいっ!、という気持ちは理解できます。

でも。そういうことじゃないんだなぁ…とがっかりします。考え方を説明するのですが、明確なモノサシを欲している方々には求める回答でないことは確かのようで、ピンときていなかったり少々納得のいかない表情をされています。

敬語を正しく使えば、お客様は感激し満足してくださるのか?

敬語を正しく使えることは大切。お客様に対して敬意を払い、お客様を大切に思っています、ということを伝えるものだから。 

でも、敬語を正しく使えたからといって、お客様が感激するほど満足されるか、というとそんなことはないのです。

「敬語上手ねぇ~!」と感激するのは、日本語が母国語ではない人がとても見事に敬語を使いこなしていた時、あるいはまだ小さなお子さんが大人顔負けの敬語を使った時などではないでしょうか。

そう、「敬語が上手に使えるはずがない」と思っていた相手が、予想以上に上手に使えた時に「すごい!」ということになるのであって、 企業の顔であるコールセンターの応対者は、「使えて当たり前」。

使えなかった時にお客様が不快な気持ちになることはあっても、それだけでお客様の満足度が高まる、ということはありません。

やっぱり敬語を正しく使えなければ減点されるの?

ここで冒頭の質問に戻ります。
敬語を正しく使えなかったらお客様が不快になる場合がある、と書きました。そうです。お客様が不快になるような敬語を使ったり間違ったり、使わないことでお客様に失礼な対応をしている場合は「減点の対象」となります。

なぜなら、お客様の満足度に影響を及ぼすから。

逆に言えば、間違ったり敬語を使わなかったりしても、お客様が気にも留めないようなものである場合には、いちいち減点しなくてもいい、と思います。お客様もいちいち気にしていないですから。

お客様がどう感じるか?が判断の基準といえます。

はい、モノサシとしてはとても曖昧です。でもチェックするためではなく、お客様に失礼ではなくかつ満足していただく応対を目指し、その達成度の確認として評価をするわけなので、「このお客様にとってどうなのか?」という基準で評価すべきだと思います。

減点されたっていいんです。「できていない」ことが明らかになったわけですから、できるようになって次のお客様にきちんと対応できればいい、のです。
ただ実際は「評価することがお仕事、目的」になっている方々が時々いらっしゃったり、競争の道具に使われたりするので冒頭の質問になり、「評価対策」という小手先のテクニックに走ってしまわれたりするんですよねぇ・・・。

それでも敬語はちゃんとできた方がいい!

減点されるかどうかは別として、お客様が気にしなくてもある程度は敬語を使いこなせるようにしておくべき、だと私は思います。

お客様に合わせて、状況に応じて適切に“使い分ける”には、「いつでもできる」状態でいなくてはなりません。引き出しにちゃんと備えておく、ということ。

ここで注意をしなくてはならないのが、「知っている」と「できる・使える」は別モノだということ。

子供の頃、食事中のお行儀が悪く親に叱られたことがあります。そういう時にはいつも「外に行ったらちゃんとやるもんっ!」と反抗していましたが、「普段きちんとできない者が外でできるわけがないっ!」とさらに叱られたものです。その頃はそれでも「できるもんっ!」と思っていたのですが、社会に出て多くの経験を積むにつれて、親の言葉が痛いほどわかるようになりました。

そういうことです(笑)

コールセンターにとって敬語はそれほど重要ではない

お客様との会話において敬語は重要な要素ではないと、私は思っています。社会通念上のレベルは必要不可欠ではありますが、コールセンターの大きな目的や意義から見ると、ちっぽけなことです(言い過ぎかしら?)。 

お客様との関係性に合わせて使いこなすことも必要ですが、やはりまずは“気持ち”が最も重要だと思います。お客様を大切に思っていないのに、ただとってつけたようなあるいは型どおりの敬語を使って話しても、お客様の心をつかむことなんてできません。
逆に言えば、敬語が多少できなくてもお客様への気持ちがしっかり伝わる応対であれば、お客様の心を少しは動かしたりつかんだりすることができるのです。

お客様の『困った・知りたい』を解消・解決し、気持ちよく自社の商品やサービスを利用し続けて頂く。そのために何をどのように伝えるか?どのような姿勢でお客様と真摯に向き合うか?ということこそが、大切なことだと思います。
お客様に選ばれ続けるために、お客様との接点であるコールセンターが担う役割はとっても重要です。

応対品質の評価とは、お客様との接点の良し悪しを確認して、改善に結び付けるための確認の手段。
評価を通じて応対者が自分の応対を見直し、一人でも多くのお客様が喜び、満足していただく応対ができるようになること、そういう応対者を一人でも増やしていくこと、がこの仕事の目指すことだと私は思っています。なので、敬語がどうとかなんてちっさいちっさい(笑)
(それでもちゃんとチェックはするけれど笑)

 

 

◆あとがき◆
ここしばらく、「応対評価」や「評価基準」について色々考えたり情報収集をしていたのですが、残念なことに未だに“テクニック”面を中心に評価をしているケースも多いようです。

今回は敬語を取り上げましたが、「口癖」「不要な言葉(えー、あのーなど)」なども全く考え方は同じです。
『お客様にとってどうなのか?』

コールセンターに限らず、また敬語に限らず、普段のコミュニケーションの基本だと思います。
『相手にとってどうなのか?』

ただ、これが難しい・・・。